2021年 02月 14日
カタクリ |

向田邦子著『思い出トランプ』に収録されている『かわうそ』『犬小屋』『花の名前』は1980年上半期の直木賞受賞作品。エッセーと同様、小説も思わず噴出すほど面白い。日常生活の一部を切り取った短編に登場する人物はどれもこれもブス男にブス女で、格好いい人間は出てこない。つまり、私を含めての周囲にごろごろいるから親近感が持てる。
『かわうそ』では脳卒中後遺症の主人公を「頭の中で地虫が鳴いている」と表現、作品のラストは「写真機のシャッターがおりるように、庭が急に闇になった」と。再度発作がきたのか、それとも死か?カメラマンで脳卒中で亡くなった、向田さんの恋人と重なる。『だらだら坂』のトミ子は細い目で「笑うとあかぎれが口をあけたようになった」とあるが、想像できそうでできない。『男眉』では聞きなれない言葉が出てきた。「地蔵まみえ」とは東京方言で眉のことで、東京方言なんてはじめて知った。「曲がない」は面白みが無い、愛想が無いこと、「月旦」は人物の批評、しなさだめをあらわす。
by m1e2k
| 2021-02-14 10:40

