2021年 02月 12日
マッターホルン |

この二人を描いた『銀嶺の人』を読む私の脳裏には先日見たドイツ映画「アイガー北壁」の、吹雪の中の氷壁にハーケンを打ち付ける主人公の映像がへばりついていた。お互いに卓越した登山技術を持ち、尊敬しあっていた医者の淑子(今井)と彫刻家の美佐子(若山)を描いた長編小説。淑子は泣かない子、美佐子は涙もろい子として描がかれるが、どちらもしっかりした自我を持つ自立した女性で、自分の生命をかけても惜しくないほどの対象を持っていた。ザイル一本でつながれた岩壁では性別などないことを教えられる。森会長の暴言など通用しない。同年代の私はあの頃何をしていたのかと振り返ると過去を消してしまいたいような焦燥感にかられる。過去だけじゃない、現在も....居直りしかないか?
マッターホルンの後、アイガー北壁登攀、グランドジョラス山頂で結婚式をあげる淑子と新婚旅行先のドリュー西壁で夫と遭難死する美佐子とは対照的な運命で、涙した。一昨年に亡くなった田部井淳子さんがエベレスト山頂に埋めたのはこの若山美子の写真と聞いている。
夏山しか経験のない私にはアブミ(縄梯子に似た登攀道具)、アプザイル(懸垂下降。ザイルに身を託して岩場を下降すること)、ユマール(自力吊り上げ器)などと登山用語を文中で説明してくれるのは有難かった。
by m1e2k
| 2021-02-12 13:06

